経理のQ&A

個人事業をスタートさせました。当初は、簿記は単式簿記で処理するつもりです。「現金出納帳」「売掛帳」「買掛帳」「預金出納帳」「経費帳」「固定資産台帳」の6つの帳簿は必ず用意しなくてはならないのですか?

ご質問の件ですが、簡易帳簿のことをご質問されていますので、青色申告を前提にお答えします。青色申告者は、原則として正規の簿記の原則に従い複式簿記により記帳することになっています。(所法148条、所規56条〜64条)。

しかし、一応の簿記の知識がなければ記帳できない複式簿記によらなくても、売上や売掛金の帳簿など、商売上誰もが記帳している帳簿によって簡単に青色申告ができるように、

  1. 財務大臣の指定する簡易簿記による方法
  2. 小規模事業者を対象とした現金主義による記帳の方法

も認められています。(所規56条、所法67条の2、昭和42年財務省告示第112号)。なお、青色申告者が正規の簿記により記帳するか簡易簿記の方法により記帳するかは、青色申告者自身が選択することになっています。

簡易簿記による方法の記帳をした場合の備付帳簿は次のとおりになっています。

簡易簿記で記帳する場合の備付帳簿

青色申告者は、次のような帳簿を備えて簡略な記帳をするだけで良いことになっています。

  1. 現金出納帳
  2. 売掛帳
  3. 買掛帳
  4. 経費明細帳
  5. 固定資産台帳

もちろん売掛・買掛がない場合には、2及び3は必要ありませんし、固定資産がない場合には、5は必要ありません。最低限、損益計算書を作成するために取引を記録した帳簿が必要になるということです。

ちなみに、会計ソフトを導入する予定であれば、複式簿記の方法による「仕訳帳」「総勘定元帳」等は、会計ソフトが自動的に作成してくれるので、わざわざ単式簿記を選択することはないと思います。会計ソフトを利用して経理を行う場合には、証憑書(領収書・請求書等の証拠書類)の保存と「現金出納帳」の記帳をすれば、あとは、関係資料を基に入力するだけです。

証憑書は7年間の保存が義務付けられていますが、ただ保存しておけばいいと言うわけではありません。必要なときに、必要な証憑書を出せるような状態にしておく必要があります。

また、現金出納帳が必要になるのは、現金取引の証明のためです。(銀行取引のように第三者が証明してくれるような資料が残らないため、手書きの現金出納帳は貴重です。)

会社名での領収証を書いてもらうように心掛けているのですが、レシートが公的領収書となっているというお店のレシートは本当に有効なのでしょうか? 宛名は会社名でなく従業員の個人名になってしまった場合にそのままでよいのかどうか迷っています。また、但し書きなのですが、正しくは勘定科目(備品とか)をいれるべきなのでしょうか? また、伝票についてなのですが、実務では取引があったとき手書きの伝票を起こすと聞いているのですが、会計ソフトの伝票に入力するだけでも大丈夫ですか?

ご質問の領収書の件ですが、長いつきあいになる大切なことですね。以下順番に回答します。

1. レシートについて

基本的には有効です。領収書等に関する規定は、消費税法に明文化されています。これによると、領収書(レシート)には「作成者の氏名・名称」「日付」「内容」「金額」「受取側の氏名・名称」の5つが記載されている必要があります。

但し、小売店、飲食店等が発行するレシートには、買い手の氏名・名称が記載されていないのが通例ですので、「氏名・名称」が記載されていなくても構いません。

2. 宛名について

個人名となっている場合でも、その経費が、法人の事業に関するものでしたら、問題はないと思います。ただ、最初から法人の名前になっている方が、いらない説明をする必要もなく望ましいです。

3. 但し書きについて

上記1の領収書への必要記載事項にある「内容」を書いてもらうことになっています。例えば、「食事代」「コピー用紙代」等です。要は、その経費の内容がある程度わかる必要があるということです。

4. 会計ソフトによる伝票について

手書きの伝票でないとダメという規定はありません。ただし、現金出納帳は「手書き」をお勧めします。それは、「証拠能力」が強くなるからです。パソコンでポンポンと入力をすれば、帳簿は出来てしまいますが、ボタン1つで変更も簡単に出来てしまいます。

一方、「手書き」の現金出納帳であれば、仮に訂正・削除等があると、すべて痕跡が残っています。より、客観的な証拠能力が強くなります

ですから、パソコンだけで会計をする場合、例えば、「訂正・削除」の記録が残るようにするとか、「伝票」と「領収書等」にそれぞれ連続番号を付して対応するようにするとか、「現金帳」は印刷の上保存し、実際の現金有り高と照合した「チェックのしるし」を残しておくとかの工夫をした方がよいと思います。

仕入先が個人事業者の場合、領収書がもらえないことがほとんどですが、この場合どのように証明すれば仕入れとして会計上成り立ちますか? 銀行振込み、代引きなどの紙でも成り立ちますか?

会計記録の証拠能力に関してのご質問ですね。会社を守るためにはとても大切なことです。

まず、大切なことは、会計帳簿は、それ自体が「証拠」となるということです。刑事訴訟法323条に次のように定められています。

第三百二十三条
前三条に掲げる書面以外の書面は、次に掲げるものに限り、これを証拠とすることができる。
商業帳簿、航海日誌その他業務の通常の過程において作成された書面

つまり、日々記帳された「商業帳簿」それ自体が証拠となりますよということになっています。さらに、外部証拠である「領収書」「請求書」「納品書」等は、会社が作成する「帳簿」と関連付けられることによって、より強い証拠資料となります。

とはいえ、現実のすべての取引において、「領収書」がすべてそろっているということはまれです。銀行の振り込みでの支払、自動引き落とし、公衆電話、自動販売機、電車・バス等の支払などは一般的に「領収書」がないことが通常です。これらの場合には、預金通帳の印字記録、出金伝票、交通費精算書、現金出納帳などの帳簿書類によってその出金を証明することになります。 なので、銀行振込み・代引きなどの紙でもOKです。

但し、繰り返しになりますが、毎日の「帳簿」への記録は非常に大切ですので、これらを帳簿と関連付けるように「日々」記録・保存をするようにされることをおすすめします。

経理をするためには損益計算書、貸借対照表以外に資金移動表、資金運用表、資金繰り表が必要と聞きました。これらはそれぞれどのようなものなのでしょうか。必ず必要なものでしょうか?

資金移動表・資金運用表・資金繰り表をそれぞれ簡単にまとめますと、以下のようになると思います。

  1. 資金移動表
    2期分の貸借対照表と前期の損益計算書から作成する表で、損益計算書をキャッシュベースに変更し、その他資産・負債の増減から資金の動きを追加した簡単な「キャッシュフロー計算書」です。
  2. 資金運用表
    貸借対照表の期末と期首を比較し資産・負債の増減から資金の調達状況と運用状況を分析する表です。
  3. 資金繰り表
    ある一定期間の資金の増減実績を表したり、将来の資金の増減を予測したりする表です。

上の3つは法的に作成が求められているものではなく、必要に応じて企業等が作成するものです。しかし、より健全で安全な企業経営を目指すのでしたら、決算が終了しましたら「資金移動表・資金運用表等」で資金の状況を分析し、期中は「資金繰り表」を作成して常に資金の状況を把握することは大切だと考えます。

租税公課という科目があると思うのですが、一体どのようなものなのですか? また売上に対してどれくらいの割合で見れば良いものなのですか?

租税公課という科目に含まれる内容としましては、

  1. 国税の利子税
  2. 自動車取得税、自動車税、重量税
  3. 収入印紙
  4. 不動産取得税、償却資産税、固定資産税
  5. 登録免許税
  6. 罰科金、罰課金
  7. 加算税

等々がありますが、一般的には、2、3、4を考えておけばいいと思います。納付の額は、売上に対する割合ではなく、保有、取得する固定資産等の内容等によって決まったりします。

例を何点か挙げてみますね。

「償却資産税」
取得した内装工事、その他の什器備品等にかかる税金で標準となる税率は1.4%です。ただし、合計金額が150万円以下ですと免税となります。
「収入印紙」
作成した文書(契約書、領収書等)にかかる税金です。3万円以上の領収書の場合100万円までは1通につき200円といったように文書の種類により税額が決まっています。
「自動車税」関係
自動車重量税、取得税、自動車税等、その保有、取得する車両の種類に応じてかかってきます。

以上ですが、損益分岐点の分析をする上では、概算になると思いますが、年間のおおよその金額を見積って、1ヶ月に割ってはいかがでしょうか?

個人名義の携帯電話なのですが、法人の業務で使った分を法人の経費として計上はできないものでしょうか?

ご質問の件ですが、法人の業務に関連する経費は、当然、法人の経費にすることができます。逆に言えば、個人のプライベートに使用している分は、法人の経費にすると、その分は、個人に対する「給与・賞与」になります。出来れば、「業務に関連する分」と「それ以外」に、請求を分けてもらうとはっきりしますよね。キャリアによっては、このようなサービスをしてくれるようです。

問題は、「業務に関連する分」と「それ以外」をどのように区分するかということになります。相手先の電話番号で区分する・話の内容によって区分する等、理屈の上では、可能だと思いますが、現実問題としては、「本人の判断・主張」によるところが多分にあります。社長さんは、「ほとんど仕事にしか使ってない。」といわれるので、全額会社の経費にしている方が多いです。この区分をはっきりさせる方法として、法人の契約に変更するというのも有効かと考えます。

法人は、「利益を追求するもの」をいう考え方がありまして、法人が行う経済的行動は、原則的に、その目的に添ったものであることが前提だからです。

いろいろ書きましたが、まとめますと、「この経費は、業務に関連している」と、はっきり主張できるなら、法人の経費にしていただいていいということになります。

自己名義の車と親名義の車を法人名義に換えましたが、買値はどのように決めたらいいのでしょうか? 自己名義の車は、軽四で2016年登録ですが、中古で2018年の4月に120万円で買ったものです。この車を今回(2019年4月)100万円で法人が買ったことにしたいと思います。そして親名義の普通車は、2017年製で車体価格180万円です。これを同じく法人が130万で買ったことにしたいと思います。これらの価格は適正でしょうか? また、減価償却は定率法でいいのでしょうか? 何年で償却すればいいのですか、中古車の場合はどのように計算すればいいのですか?

車両の売却ですが、この売却による所得は、売り手である個人の譲渡所得(総合課税分)となります。譲渡所得(所有期間5年以内の短期譲渡所得の場合)の算定は、次のようになります。

算式:譲渡所得=譲渡による収入−取得費−特別控除額(50万円)

取得費については以下の通り考えます。

  • (事業用に使っていた場合)
    取得費=取得価額−事業所得等の金額の計算上必要経費とされた減価償却累計額
  • (事業用で使っていない場合)
    取得費=取得価額−同種の事業用資産の耐用年数の1.5倍の耐用年数の定額法による年償却額×経過年数(6ヶ月以上1年、6ヶ月未満切り捨て)

それから、中古の耐用年数ですが次の算式で求めます。

  • 法定耐用年数のすべてが経過している場合
    法定耐用年数×0.2
  • 法定耐用年数の一部が経過している場合
    法定耐用年数−経過年数+経過年数×0.2
  • 1年未満の端数切り捨て、2年に満たないときは2年

ですから、ご質問の自家用車が事業用でないことを前提にすると……

  1. 中古の軽四の譲渡所得

    耐用年数は、小型車の法定耐用年数は4年ですので、

    • 4年−2年(経過年数2年)+2年×0.2=2.4年 → 2年
    • 2年×1.5=3年(非事業用のため)→ 0.333(定額法の償却率)

    取得費=120万−120万×0.9×0.333×1年(取得から譲渡までの期間)=840,360
    譲渡所得=100万−840,360<50万 → 所得なし

  2. 親名義の普通車の譲渡所得

    耐用年数は、普通乗用車は6年ですので、

    • 6年×1.5=9年 → 0.111

    取得費=180万−180万×0.9×0.111×2年=1,440,360
    譲渡所得=130万−1,440,360<50万→所得なし

以上のような計算になると思います。

以上、今回の場合、特別控除の50万がありますので譲渡所得の問題はありません。譲渡の金額は適正価格(第三者同士で成立するであろう価格)が原則となります。価格が適正かどうかのご質問ですが、車両の状態等にもよるでしょうが、そんなにおかしな金額ではないのでしょうか。また、譲渡所得は歴年単位で計算しますので、今年中に他に譲渡がないという前提です。

設備投資をする際、手持ちの資金で設備投資した方が良いのか、それともリースを利用して毎月料金を払っていった方が良いのか教えて下さい。どちらが節税できますか?

ご質問の件ですが、簡単な事例でご説明していきますね。

【事例】

  • 必要な店舗の改装・設備 500万円
  • 耐用年数 5年
  • リース期間 5年 リース料率 2%

上記の条件で、手持ちの資金で設備投資をした場合と リースを利用した場合とを比較してみます。

  1. 「手持ちの資金で設備投資」をした場合
    • 手持ちのお金 500万円の減少
    • 毎年の経費(減価償却費)500万円×0.9÷5=90万円(定額法の場合)
    • その他の負担(保険料、固定資産税等)
  2. 「リースを利用」した場合
    • 手持ちのお金 変動無し
    • 毎年の経費(リース料)500万円×2%×12ヶ月=120万円

実際には、リースの条件、償却資産税、保険料等の要素がありますので、もう少し複雑な比較になってきます。

ポイントは、どちらの方法によっても一定の計算によって必要な経費として計上出来ます。リース料には「金利、税金、保険料」が含まれています。リースをうまく使うと手持ち資金に余裕が出来るということだと思います。

新しく事業を始めようとしますと、資金計画が大切になってきますが、手元にある程度の余裕があると、いざというときに助かりますね。税金の有利・不利も問題より、資金計画への影響の方を大切に考えた方がいいかもしれませんね。

創業して半年後、事務所を移転しました。その際の新事務所の保証金、改装費用の経理処理についてお聞きします。契約書によると保証金(40万)は事務所を出るときも戻ってきません。改装費用は新しい事務所に空調をつけたり床をはったり、レイアウト変更に伴う費用で70万ぐらいになります。利益もでているので、経費として落としたいのですが、経費にした場合問題はあるのでしょうか? 改装費用は「修繕費」として処理し、保証金を販管費として無理ならば、「創業費」などにして、決算時に一括償却しようと考えております。

残念ですが法人税では「損金(経費)」として処理できません。

まず、40万円の保証金(戻ってこない分)は、「繰延資産」として、5年間での均等償却をすることになります。(つまり5年間で均等に経費として処理することになります。)また、レイアウト変更にかかった70万円は、その内容が詳しくわかりませんが、1単位当たり(1個または1組、1揃え)10万円以上の減価償却資産については、その種類に応じた耐用年数で減価償却をすることになります。(10万円以上20万円未満の場合、一括償却といって3年償却を選択することもできます。また、中小企業については、法律的には期限付きながら、取得した30万円未満の少額減価償却資産は、事業年度に全額損金算入(即時償却)できる特例制度があります。(※令和1年8月現在))

ご質問のように、それぞれの金額を決算書の段階で「経費」にすることは可能ですが、法人税の「損金」にはなりませんので、税務申告書でその経費がなかったこととする処理を行います。

ちなみに、事務所を移転されたということですが、「移転元の事業所」での申告をしているなら、「納税地の変更届」を提出する必要があります。(納税地に選択している「事業所」そのものが移転するためです。)

当初事業収入1,000万円以下のつもりで立ち上げたところ、結果的に1,000万円以上になってしまいました。免税事業者のつもりだったので、消費税の仕訳は期中に行っていませんが、税務申告時に何か簡便法がありますか。また翌期は必ず消費税仕訳をする必要がありますか。

ご質問ですが、消費税の納税義務があるかないかの判定は、原則としてその年度の前々事業年度(基準年度といいます)における課税売上高が1,000万円以下であるかどうかによって決まります。

設立1期目の法人の場合、基準年度はありませんので、自ら課税事業者を選択した場合を除いて納税義務はないことになります。

もし、出資金が1,000万円以上ならば、設立1期目から、課税売上高が1,000万円以下であっても消費税の納税義務があります。

そうでなければ、今期の課税売上高が1,000万円を超えても消費税の申告は必要ありません。課税売上高が1,000万円を超えた事業年度の原則翌々期(2年後)から消費税の納税義務者になりますので、その時からは消費税の処理が必要になります。ただし、その事業年度の開始の日から半年間の課税売上高が1,000万円を超えた場合には、その翌期(1年後)から消費税の納税義務者となることがありますのでご注意ください。

アルバイトを雇おうと考えております。アルバイト料は支払った分だけ経費にできるのでしょうか?契約書みたいなものが必要になってくるのでしょうか? また、その場合にかかってくる税金について教えて下さい。

アルバイトの方に支払う報酬の形態には、2種類考えられると思います。「雇用形態」と「請負形態」です。

事業者が使用者を「雇用契約」で、「給料」を支払うか、「請負契約」で、「外注費」を支払うかの違いがあります。(そのほか責任だとか消費税の取扱とかの違いもあります。)文面から推測しまして、雇用契約の形だと思いますので、この場合について説明しますね。

アルバイト料として支払う金額は、厚生労働省の定める最低賃金以上でしたら、いくらでも問題はないと思います。一般的なアルバイトのお給料の基準は「時間」になります。ですから、「時間給○○円」だとか、「1日○○円」だとかで契約することになると思います。契約書についてですが、基本的には雇用条件を文章で示す必要がありますので、雇用契約書はあった方がいいと思いますが、実務的にはない場合の方が多いですね。

さて、税金についてですが、支払うお金は「給与」となり、支払をするときに「源泉徴収」(所得税の天引き)が必要になります。源泉徴収する場合の、税額ですが、「源泉徴収税額表(日額表)」を使います。この表は、「国税局」のページでダウンロードすることが出来ます。

アルバイトを雇用する場合に注意する点は、そのアルバイトの方の管理をしっかりしておく点だと思います。アルバイトの方の名前・住所・扶養家族等を届けてもらう「扶養控除等申告書」を提出してもらい、支払の証拠を(領収書又は、銀行振込等)を残しておきましょう。

従業員の源泉所得税の計算式を教えてください。現在、社会保険は入っておらず雇用・労災保険のみです。また、扶養家族がいる場合の源泉所得税額はどうなるのでしょうか? 税務署でもらった計算式では交通費の扱いなどが今ひとつわかりません。実は今月の給料で、誤って給与の10%を差し引いてしまいました。取りすぎた場合、どのように返せばいいのでしょうか?

税務署で源泉徴収の税額表をもらってきていますか? もし、まだでしたら、国税局からダウンロードしてみてください。

さて、まず交通費の取り扱いですが、交通機関を利用する場合には月額15万円までの非課税が認められています(もちろん実費までですが)。 この非課税は、給与所得上の非課税ですので、所得税の対象外ということになります。ご質問の場合、次のような計算になります。

例えば、給与34万(交通費3万円を含む):

(従業員さんが、「扶養控除等の申告書(主たる給与の支払い者に扶養家族の名前等を記載して提出する書類)」を提出している「甲」欄の適用者とします。)

  1. その月の社会保険料控除後の給与等の金額を求めます。

    • 34万−3万=31万円(交通費3万円は非課税)
    • 税額表の甲欄で扶養親族等の数に応じた税額を見つけます。(平成31年分の給与所得の源泉徴収税額表の場合)
    • 31万の場合、308,000以上311,000未満の欄で扶養家族1人の箇所を見ます。
    • 答えは、7,110円となっていますのでこの金額を源泉徴収します。

文章で書くとややこしく見えますが、実際、税額表を見ながらすると簡単ですよ。

また、徴収しすぎた場合、まだ徴収した源泉税を納付していなければ、差額を従業員さんに返してあげればいいと思います。すでに、納付が終わっている場合、税務署から「誤過納」分を返還してもらうのは、いろいろ書類をそろえる必要があり、かなり面倒です。源泉された税額は、最終的には、年末調整で精算されることになりますので、それまで従業員さんに待ってもらうか、面倒でも書類をそろえて税務署から還付してもらうかということになります。

必要な書類は、給与台帳、扶養控除等の申告書、誤過納の還付申告書等ですが、会社で作成している書類によって若干違うと思いますので、直接税務署に問い合わせてみてください。

外部講師に講演を依頼する際、支払う講師料には源泉所得税の徴収が必要なことは、理解していますが、その場合、事務的な仕事(コピー、司会等)に対する報酬には源泉税は徴収されないのでしょうか? もしそうなら源泉徴収の線引きはどのあたりにあるのでしょうか?

ご質問の文面からは、講師の方に講演を依頼し、報酬を支払う際、報酬の中に講演に関連する他の雑業務も含まれているというような意味合いにもとれますが、もしそのような意味でしたら支払う報酬は全て「講師料」として源泉徴収の対象となります。

ただし、「講師料」に対応する業務と「コピー、司会等」に対応する業務を別々に依頼している場合(別の人に依頼している場合等)には、ご指摘の通り、「講師料」は、源泉徴収の対象になりますが、「コピー、司会等」の事務的な仕事に対する報酬に対しては源泉徴収の必要はありません。

但し、あくまで実質面で判定してくださいね。支払の名目を「コピー、司会等」としても、実態が「講師料」でしたら、当然、源泉徴収の対象となります。

源泉徴収の対象となる「報酬・料金等」は、所得税法204条1項1号、所得税法施行令320条、に規定されていますので、ここに規定されている報酬等は源泉対象になり、規定されていないその他の報酬は源泉対象にならないことになります。

また、法律の解釈については、所得税基本通達204-6〜204-10が参考になります。ご興味がありましたら、アドレスを下記に記しておきますのでご参考にしてください。

ご質問の「源泉徴収の線引き」なんですが、どのような報酬が源泉徴収の対象になるかは、条文上明らかにされていませんが、私の解釈は、「個人が特殊な能力・技術・資格を活用して報酬を得る業務」にかかる報酬・料金等が源泉徴収の対象となるように理解しています。しかし、これらの法律が作られたのは、昭和40年頃です。当然、特別な能力等を使って報酬が得られる仕事の範囲・内容は変化してきていると思いますが、その変化に法律の改正が追いついていないと思います。

実務での対応としましては、所得税法及び所得税法施行例に掲げてある「報酬・料金等」は、源泉徴収の対象として源泉徴収してあげて、確定申告で精算してもらう。その他の報酬は源泉徴収の対象とならないので、確定申告の時にその分納めてね、とある程度割り切った対応が必要かと思います。

個人事業者と契約し、料金を振り込みます。例えば、合計500,000円、消費税40,000円、税込み合計540,000円の場合、源泉所得税として徴収すべき額はいくらになるのでしょうか? また、徴収、納付の方法はどのようにするのでしょうか?

源泉徴収のご質問ですが、徴収税額の計算方法は、その支払いの内容によって異なります。個人に対して支払をする場合の対象は、次の8つです。個人に対する報酬でもこれらに該当しない場合には、源泉徴収の必要はありません。

〈源泉所得税の対象となるもの〉

  • 原稿・さし絵・作曲・デザイン・講演等の報酬
  • 弁護士・司法書士・税理士等の報酬
  • 社会保険診療報酬
  • プロスポーツの選手・外交員・集金人等の報酬
  • 映画・演劇等の役者さん、これらの企画・演出の報酬
  • ホステスさん等の報酬
  • プロスポーツ選手等の契約金等
  • 賞としての賞金・競馬の賞金等

さて、ご質問の文面からは、支払内容がわかりませんので、源泉徴収の対象があるか判りませんが、勝手に、デザインなどを依頼したと言うことを前提にお答えさしていただきますと……

デザインの依頼は、上記の「1」に該当しますので、源泉徴収額の計算は、下記のようになります。

算式:支払金額×10.21%(1回の支払金額が100万円を超える場合のその超える部分の金額については20.42%)

ご質問の金額ですと、500,000円×10.21%=51,050円になります。消費税に関しては、報酬と明確に区分されている場合には源泉徴収の対象にはなりません。

源泉所得税の徴収、納付の方法ですが、源泉徴収すべき所得税額を、支払金額から控除して(徴収して)相手に支払い、その支払の日の属する月の翌月10日までに納付することになります。納付は、納付書(税務署に備え付けられています。)に記載し、最寄りの銀行または、郵便局でその源泉徴収した所得税額を給与等の源泉所得税とあわせて納付します。

ちょっと補足ですが、毎年1月31日までに、前年中に支払った給料・報酬等に関しては、「給与の源泉徴収票」「報酬の支払調書」「これらの合計表」を作成して、支払の相手先と税務署に送付、提出することになります。その時になってあわてないように、「源泉徴収の納付書の控え」「支払の相手先の住所・氏名・その内容・支払の日付」等をわかるように保存しておくことをお勧めします。

納期の特例制度を適用しています。ただ、これは弊社から給与を支払っている従業員(私も会社から給料もらっているので対象ですが)が対象ですよね? 社外の方、個人事業者に会社から支払った場合も、従業員の給与と同様の扱いでいいのでしょうか?

まず、源泉所得税の納期特例制度について簡単に説明しますね。これは、常時使用する従業員の数が10人未満の場合に、税務署へ「源泉所得税の納期の特例の承認に関する届出書」を提出することにより適用できる制度で、通常支払った日の翌月10日までに納める源泉所得税を、半年に1回まとめて納付することができるものです。つまり、1月〜6月支払分を7月10日に、7月〜12月支払分を1月20日に納付できることになります。

さて、ご質問の件ですが、この特例の対象となるのは、給与や退職金から源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税と、税理士、弁護士、司法書士などの一定の報酬から源泉徴収をした所得税及び復 興特別所得税に限られています。したがって、個人事業者に支払った報酬の内容が、税理士、弁護士、司法書士などの一定の報酬以外であれば、原則通り支払った日の翌月10日までに納める必要があるということになります。

株式会社の取締役ですが、報酬額を決めたらその事業年度はその報酬額を変更できないと聞きましたが本当ですか? 例えば、月額50万円以下と決めておけば、最高50万円で各月の業績に変動させて毎月報酬額を変えることは可能なのでしょうか?

税務上、役員に対する報酬を業績に応じて変動させることは、一般的な中小企業では難しいでしょう。(業績連動型給与というものもありますが、基本的に同族会社は適用外であるためです。)つまり、支払は可能ですが、一定部分が損金(法人税の経費)にならないことになります。

具体的には、毎月定期同額で支給されることとなっている金額を超える部分の報酬については、役員賞与として取り扱われます。そして役員賞与は、法人税の損金になりません。このような取扱は、役員との契約は、商法上の委任契約に基づいていることと役員報酬は、恣意的に変更させやすく、利益操作につながるからという理由によるものだと考えています。

ここで問題は、どのような人が役員として扱われるかですが、税務上の役員は、商法とは少し異なっています。税務上役員となる人は以下のような方です。

  1. 通常の役員
    取締役、監査役等、法人の使用人以外の者でその法人の経営に従事している者
  2. みなし役員
    会社の使用人のうちその会社の株式を一定数以上(ややこしいですが、本人5%以上)持っている者で、その法人の経営に従事している者(代表者の家族なんか該当する人が多いです。)

また、これとは別に「使用人兼務役員」といって、名前は役員ですが、実質使用人としての仕事をしている方についての取扱があります。使用人兼務役員については、使用人部分に相当する賞与は、損金に入れることが出来ます。例えば、取締役営業部長(課長)とか、支店長とかの場合には、役員ですが、使用人としての仕事もしているわけですから、使用人としての給与・賞与は一般の従業員と同じ経費処理が出来ることになっています。

では、どのような方が「使用人兼務役員」になれるかというと、ちょっと複雑ですが、ご説明しますね。(以下、条文の要約)

「使用人兼務役員」とは、役員のうち、部長、課長その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事している者をいう。ただし、次に掲げるものを除く。

  1. 社長、副社長、代表取締役、専務取締役、常務取締役等これらに準じる役員
  2. 監査役
  3. 次の全てを満たしている者
    1. 持ち株割合が50%以上となる株主グループのいずれかに属している
    2. その役員のグループが10%以上持っている
    3. その役員及び配偶者等が5%以上持っている

ちょっとややこしいかもしれませんが、5%以上の株を持っていなくて、実質的に従業員と同じような仕事をしている場合には、「使用人兼務役員」になる可能性があり、そうなると、使用人としての仕事に対する報酬は、成績に応じて支払うことも可能となります。この判定は、形式的な基準(登記簿にどのように登記されているかと持ち株数の状況)と実質的な基準(その法人の経営に従事しているか否か)によって判定されます。

以上まとめますと、税務上の役員でしたら、「毎月一定額の報酬」を超える部分はアウトとなり、使用人兼務役員でしたら「変動」してもOKということになります。 ご理解いただけましたでしょうか?

株主を従業員として雇用する場合、持ち株比率により従業員とは認められない場合があると聞きました。どのような持ち株比率であれば従業員として認められるのでしょうか? 妻が全株式の10%(100万円)の株を保有しており、監査役に就任しています。とはいえ、実態は従業員と変わるところがないため、従業員として取り扱うことは出来ますか? また、創業時から一緒に協力してもらうスタッフが同じく全株式の10%の株を保有する予定です。このスタッフを引き続き従業員として雇用したいのですが問題があるのでしょうか?

税務上役員とみなされるものには、大きく分けて次の2種類です。

  1. 会社法上の役員
    取締役・監査役・理事・監事・清算人 等(登記簿に登記されている)
  2. 税務上のみなし役員
    1. その法人の使用人以外の者で、その法人の経営に従事しているもの(総裁、会長、相談役、顧問、理事長等で取締役・ 理事になっていない者)
    2. 同族会社の使用人のうち、下記のすべての要件を満たすもののうち、その会社の経営に従事している者
      • 持株割合の合計が50%に達するまでの範囲内で上位3順位以内の株主グループに属していること。
      • その株主グループの持株割合が、10%超であること。
      • その使用人の持株割合が、5%超であること。

1.は、わかりやすいと思いますが、ややこしいのは、2.の税務上のみなし役員です。

(イ)は、すべての法人が対象で、実質的な経営者が役員の登記をしないで実質的に役員と変わらないような場合です。

(ロ)は、「同族会社」(3つのグループの持株割合が50%以上の会社)にのみ適用されます。一定の持株があり、経営に関与している(代表である必要はない)場合です。

どちらの場合も、ポイントは、法人の経営に従事しているかどうかによります。たとえば、「役員会(経営会議等)に出席している」「銀行の借入等重要な業務を行っている」などが経営に従事している判定基準になります。

ご質問の監査役の件ですが、「監査役」は、1の会社法上の役員となりますので、税務上も「役員」となり、「使用人(従業員)」にはなりません。また、御社は、「同族会社」になると思いますが、2の(ロ)の規定の適用になり、持株割合・経営従事がポイントとなります。持株割合は、50%、10%、5%で見ればいいのですが、経営に従事しているかどうかは、実質的な判断になりますので、そのスタッフの方が具体的にどのような仕事をするかですね。(創業時から一緒ということは、イメージ的には「信頼できるパートナー」ということで、経営に従事しているように聞こえますね。)

ただ、「役員」であっても「使用人兼務役員」となって、使用人部分の賞与を経費にすることが出来る規定もあります。要件は次のすべてに該当することです。

  1. 社長、副社長、代表取締役、専務・常務、監査役等でないこと
  2. 上記の一定の持株要件に該当しないこと(50%、10%、5%)
  3. 職制上の地位を有すること(取締役営業部長、取締役経理部長等)
  4. 常時、使用人としての職務に従事する者であること(非常勤はダメ)

以上ですが、ご質問の内容から推測して、「奥様」と「友人」を役員以外の立場にしておきたいというように感じましたので、それに対するアドバイスとしましてまとめておきますと、以下の通りです。

  • ご夫妻で「50%超」の株式を持つ(これで、お2人以外の方は、持株条件からはずれます)
  • 奥様を「監査役」にしないで、経営に従事していないようにする
  • 友人を使用人としての肩書き・仕事内容にする

まだ会社では健康保険、厚生年金には加入していません。その代わりに自分で支払った国民健康保険や国民年金は控除の対象になるのですか? また、途中入社の社員が前職場の源泉徴収票をもっていなければ、どうすればよいのですか? 年末調整の給与支払報告書(個人別明細)の、給与所得控除後の金額というのは、支払金額から通勤費と社会保険料を引いた金額でよいのですか?

まず、年末調整に必要な資料について簡単にご説明しますね。

  • 年間の給与賞与の支払額、給与から差し引いた社会保険料等、給与から控除した源泉徴収税額を確認できる資料(賃金台帳、給与明細の控え等の給与支給データ)
  • 生命保険・地震保険の控除証明書等
  • 給与から差し引かれる社会保険料等以外に負担した社会保険料等がある場合にはその金額を確認できる資料(例えば、国民年金の控除証明書、国民健康保険の領収証)
  • 扶養控除等の申告書(配偶者特別控除の適用がある場合にはその配偶者の所得も)
  • 住宅等借入金特別控除の適用がある場合にはその書類

以上のような資料が必要になりますが、該当がない場合にはもちろん必要ありません。

国保・国年の件は、「社会保険料控除」の対象になるのは、何かというご質問だと思いますが、社会保険料控除は、従業員が自分で支払った国民健康保険、国民年金も対象となります。この控除の対象は「支払ったもの」である必要がありますので、未払のものについては、実際に「支払った年」に控除することになっています。また、本人と生計を一にする親族が負担することとなっている社会保険料で、本人自身が支払ったものは、本人の社会保険料として控除できます。

途中入社の年末調整については、前職場の「源泉徴収票」等が必要です、これがないと、その人の今年1年間の給与所得が計算できませんからね。「源泉徴収票」自体が無くても、給与の収入金額・社会保険料・源泉税額等が確認できればよいのですが、確かな金額としては、前の会社が発行した「源泉徴収票」が簡単で確実ですね。これらの金額が確認できないときは、ご本人が確定申告等を行うことになります。

最後に「給与所得控除後の金額」は、その年中の給与等の金額(給与・賞与の合計額)に応じて、「年末調整のための給与所得控除後の給与等の金額の表」を使って「給与所得控除後の給与等の金額」欄の金額で求めて下さい。